年金に「消費増税」は必要ない――高橋洋一さん

 「東京裁判史観(自虐史観)を廃して本来の日本を取り戻そう!」
    そう願う心が臨界質量を超えるとき、思いは実現します。
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《 いま注目の論点 》
★独裁者の「いつか来た道」――石平さん
【「石平のChina Watch」産経新聞 H31.01.10 】https://tinyurl.com/yaeld63u
★日本にとって 韓国の意味とは――阿比留瑠比・論説委員兼政治部編集委員
【「阿比留瑠比の極言御免」産経新聞 H31(2019).01.11 】https://tinyurl.com/y9d3r2kn
★皇統の危機 論じるとき――櫻井よしこ
【「美しき勁(つよ)き国へ」産経新聞 H31.01.07 】https://tinyurl.com/ycnvzmmy
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●年金に「消費増税」は必要ない

『未来年表 人口減少危機論のウソ』https://tinyurl.com/ychbkuat
【 高橋洋一、扶桑社 (2018/11/2)、p122 】

厚生年金基金、GPIF、徴収漏れ、これら3つの問題が明るみに出たことで、年金財政の危機が囁かれることになったわけだが、繰り返し言うように年金制度は破綻しない。

政府は5年に1回、「財政検証」を行い、人口や経済の実績を織り込んで公的年金財政の健全性を検証している。名目成長率など、検証時の前提条件となる想定数字の見積もりが甘いと批判されることがよくあるが、それは「年金」の問題ではなく「マクロ経済政策」の問題だ。経済政策が良ければ、年金制度もうまく回っていく。

2008年のリーマン・ショック直後、政権の舵取りが自民党から民主党へと変わったが、民主党は金融政策に疎かったため、インフレ目標の設定などは当時なされなかった。これでは批判を受けるのも仕方がない。

一方、アベノミクスの金融政策では、結果として失業率が下がって雇用が増えた。これは非常に重要なことだ。若者が職に就けなければ、年金保険料の支払いが減り、将来を見通せないからだ。

公的年金の保険納付はすべての国民に義務付けられているが、現実には所得が低くて払えなかったり、一部免除を受けたりしている人もいる。では、その人たちが払うはずだった分のお金は、どこから補てんするのか、その財源は税金ということになるが、そもそもの体系が分かれば、年金に使うべき税金の種類が分かってくる。

世の中には「〇〇税」と税の名のつくものが山ほどあるから、たくさんの種類があると思っている人も多いだろう。しかし、単純化して言えば、日本の個人課税には(1)所得税(資産税を含む)と(2)消費税の2つしかない。所得税は所得源泉で、個人の財布に入る段階で税金を取られる、対して、消費税は消費源泉で、財布から出る段階で税金が取られるという違いがある。

ここで大事なのは、2つの税金の使われ方だ。

税金は行政の業務に使われるが、国と地方では異なる役割分担がある。例えばゴミ収集業務などの基礎的業務は地方の自治体で行い、自治体でできない外交や防衛などを国が行うという「補完性原則」というものがある。

そして、税金には受ける行政サービスに応じて払う「応益税」と、負担能力に応じて払う「応能税」という方がある。消費税は応益税になるため、地方自治体の基礎的業務に使われるのが適している。一方で、所得税は応能税になるため、国の業務に使われるのが適しているという大きな違いがある。

たしかに保険の理論なら、保険料を払えない人の穴埋めに消費税を使うとうい選択肢は排除できない。だが、応益税と応能税とう税の理論に基づけば、消費税は国の業務である年金保険料の穴埋めに使うと、たちまちロジックが破綻してしまうのだ。

以上のことから、年金保険料の穴埋めに最も公平なのは「所得税」の一択だといえる。

所得税は、お金持ちから厚く、そうでない人からは薄く税金を徴収することで、所得を再分配できる性質を持っている。しかも、日本では、金融所得課税が低率な分離課税(ある所得を他の種類の所得と合算せず、分離して課税すること)となっており、高額所得者の負担は低い。これを総合課税(他の所得と合算して課税すること)、あるいは高率分離課税にすると、高額所得者の負担の余地は大きくなる。一方で、消費税はすべての国民に同じ税率がかかるため、所得の再分配機能はほとんど期待できない。そのため、「社会保障のために消費税を上げなければいけない」という理屈はおかしなものだといえる。さらに言えば、日本では、先進国では例がないだろうが税務徴収当局と社会保険料徴収当局が二元化しており、税と社会保険料の一体徴収ができていない。このために、社会保険料の徴収漏れは数兆円と国会で議論されている。こういった徴収漏れを放置したままにして、消費税増税というのは甚だおかしい。

世界各国でも、年金は数理計算を用いており、消費税を社会保険に充てる国など存在しない。これは、かつての大蔵省の答申においても、「消費税を社会保障目的税としている国はない」と記されている。

また、本来ならば、年金制度は保険料とその運用だけでまかなわれるべきものだ。よって年金の給付額を増やしたいのであれば、一にも二にも保険料を上げるのが理にかなっている。それでも足りない場合に、所得税でどう補うのかという順番で発想するのが筋だ。

「それなら法人税を年金の財源に充てるという方法があるのでは」と主張する人もいるかもしれない。しかし、それは明らかに間違っている。法人税は、そもそも所得税をきちんと取れていれば徴収する必要のない税金だからだ。しかし、日本では長年、自営業者や農林水産業者などに対する所得の捕捉率が低いため、なかなかそこまでには至らない。

法人の所得は、最終的には従業員への給与と株主への配当になるため、給与所得と配当所得をきちんと補足できていれば、法人税はゼロでも全くかまわない。日本は法人税率が高いため、法人税を下げないと国際競争力が落ちるなどとよく言われるが、その主張は馬鹿馬鹿しい。

他の国なら、給与所得も配当所得もきちんと捕捉し所得税で取れるようにして、さらに、日本のような金融所得を分離課税にして低税率にするのではなく、総合課税または高率分離課税にして、法人税を下げようというロジックが成り立っている。つまり、国際競争力うんぬんではなく、日本はそれだけ所得の捕捉率が低いから、法人税率が下がらないということが分かる。

今後、所得の捕捉率が高まれば、自然と法人税率は下がっていくだろう。だから、いずれゼロになるかもしれない税金を、保険料の穴埋め財源としては使えない。その意味でも、法人税は年金の穴埋め財源の候補から外れる。