勲章はコップ直径ほどの足のマメ

2004-11-03
第9回三河湾チャリティー100km歩け歩け大会は、10月30日(土)午前7:00、碧南明石公園をスタートしました。これと時を合わせるようにして、雨が降り出します。予報どおりの雨です。

主催者である七福醸造株式会社の犬塚敦統(あつのり)社長は、スタート前の参加者を次のように励ましています。
「今日は雨です。だから、みなさんは幸運だと思ってください。修行というのは、条件が過酷であればあるほど、大きな効果を得ることができます。みなさんが過酷な条件のなかで大きな気づきに出会うことを期待しています」

私は好調なスタートを切りました。そのまま第1のチェックポイント・太陽の家(30km)までは一気でした。サポーターの方に「早いですね。3番ですよ」といわれ、あらためて自分の軽快な歩きに自分自身が驚いていました。後々、この軽快さに苦しみが同居することなど知る由もありませんでした。

次のチェックポイントである三谷温泉「海洋閣」(39km)を過ぎ、右手にヨットハーバーを見ながら歩いているときでした。右足裏、中央よりやや前方付近にマメかなと思わせる痛みを覚えるようになりました。最初は点のような痛みでした。ところが、痛みは次の50kmポイントを目指すあいだに着実に面の痛みとして広がっていきます。

右足を深い水溜りに突っ込んだとき、足首から下全体が冷却され、マメの痛みが和らぐ感覚がありました。「そうか、冷やしてやればいいんだ」と思った私は、わざと水溜りに足を突っ込むという歩きを始めました。

しかし私のこんな浅知恵は、広がり続けるマメの前にはひとたまりもありません。冷やそうとして、水溜りに足を突っ込んだとたん、今度はヒリヒリとしみるような痛みが襲ってきました。ふやけてしまったマメの皮が、着地のたびに受ける力で容易に破けてしまったようです。そこからは、「水溜りは恐い」の歩きに変わります。

50kmと63kmのポイントでそれぞれ入念なストレッチングをやり、次を目指しました。歩き出しはヒリヒリとした痛みが走るのですけれど、始めの数十歩を歩くうちに痛みがマヒすることを知りました。足腰に疲労感やこわばりがなく、軽快な足取りを保つことができたので、マメの痛みだけで棄権する気持ちにはなれません。

70kmのポイントで靴を脱ぎ、マメを観察しました。コップの直径ほどもあるマメの皮がはがれ、赤く痛々しい下層の皮膚が露出しています。もし途中でマメの姿を見ていたら、おそらく歩き続ける気持ちがおおきく揺さぶられたものと思われます。

水気を取り、皮をマメにかぶせ、サポーターの方にしっかりとテーピングをしてもらいました。「地獄に仏」を見る思いでした。マメの痛みが完全に消えたわけではないですけれど、マメの皮がずれる心配がなくなり、あとは安心して歩きを続けることができました。

90kmのポイントを過ぎたところで、寒さのために震えが出そうになります。これは、早足による体温の回復を図ったことと、たまたまあったサークルKでホッカイロを買い込んでお腹に入れることでなんとか凌ぐことができました。

実は、今年から伴走者(サポーター)の負荷を軽減するために各チェックポイントの受付開始時間が設けられました。つまり早く着いても、受付開始時間になるまでは、そこの通過タイムを記録してもらえず、次のポイントを目指すことができません。

幸い90kmまでは、私のペースよりもわずかに早い受付開始時間が設けられていたため、足止めを食うことはありませんでした。問題は最後のチェックポイントとゴールに設けられた受付開始時間です。

97.5kmチェックポイント: 2:00
ゴール100km国民休暇村「伊良湖」: 3:00

90kmを出たときの私のペースでは、97.5kmが1:30到着予定。そこで2:00まで待って、ゴールに向かったとして、ゴール到着予定は2:30というところです。それぞれのポイントで30分ずつ待たされる見当です。

既に寒さによる震えを経験していた私は、もし97.5kmで足止めを食らい、全身ずぶぬれの身体で寒さを凌ぐことができなかったら、潔く棄権しようと心に決めます。ところが、97.5kmに着いてみると、なんとサポーターの方が「大会側の好意で、受付開始時間を撤廃しましたので、いつゴールしても大丈夫です」と言うではありませんか。

私は心の中で「助かった」と叫び、ゴールまでの残り2.5kmの行程を急ぎました。雨は豪雨に変わり、レイン・フードを激しく打ちつけます。稲光までが輝いています。まるで100kmウォークのフィナーレを飾る祝福の大演奏のようでした。

傍目にみると、いともあっさりと自分だけで完歩したように思われるかも知れません。でも私は、多くの方々との縁があってはじめて達成することができたことを、深い感謝の気持ちとともに知っています。

・ 見ず知らずのガソリンスタンドの女性が励ましのことばをかけてくれたこと
・ サポーターの車がすれ違うときに必ず声援を送ってくれたこと
・ 本当に必要なときにテーピングにめぐり合えたこと
・ 今年はガードマンの方が「あと○○キロです。頑張ってください」と、歩く人の気持ちを思いやることばをかけてくれたこと
・ 大会側のご好意でゴールの受付開始時間を撤廃してくれたこと

数えあげたら切りがありません。でも、100キロウォークを完歩する最大の要因をひとつだけあげろと言われたら、私ならこう答えます。
「各チェックポイントに、必ず自分を無条件の愛で迎えてくれるサポーターがいてくれるから」

今回完歩することができた私は、来年伴走(サポーター)に回ります。